A化学工業(株)に於けるオイル添加剤投与試験報告

  1. 試験の経緯

     標記客先に於ては、従来からディーゼル式自家用発電装置を保有しており、A重油を燃料としている事もあって、500時間(約20日)毎にエンジンオイルを交換しながら運転していた。燃料に含まれるイオウ分が多く、硫酸灰分やカーボンが多く発生する事も一因となりエンジンオイルの劣化が早く、500時間稼働毎にオイル交換を実施しても、新油値に対する粘度増加率,油中の固形分含有率などの上昇割合が圧倒的に大きく、これに加えて油質低下の為か、油中含有金属成分の分析(SOAP)では鉄(最大239ppm),銅(最大17ppm)とエンジンの内部摩擦がオイル交換をくり返す毎に徐々に進行傾向にある様子がうかがわれた。(データNo.1の分析No.a〜cの3件)
     よって客先と協議の結果、これからの状況を改善すべく弊社製エンジンオイル添加剤『SUPER OIL 21』を投与して、その改善効果を確認する事になった。

  2. 添加剤投与前の状況

     添加剤投与前は、1990年9月上旬のオイル交換時点から500時間(約20日)周期毎に3回に宣って使用油の主要分析項目を調査した。結果は別紙オイル分析表及びグラフ(データNo.1No.2)の通りで、その内容は冒頭に記述の様に定期的なオイル交換を実施しているとはいっても、決して理想的なオイル管理状態とは言えない状況であった。
     添加前の油中固形分の値は単純平均すると20.6%で非常に多い状態である。これはエンジンオイル中のカーボンを分散させて固形化するのを防ぎ、イオウ分の多い重油の燃料によって生成される硫酸灰分を中和させて無害化する働きをもつ清浄分散剤が急速に消耗されている為、その力を十分発揮出来ない事も大いに影響している。
     更に酸化防止剤の減少も手伝って、油中スラッジの発生が助長される事で、固形分の増加に加え、粘着性スラッジの量も増える為に、粘度も上昇傾向となる。(添加前の粘度のピークは約184cst)
     この様な状況では、まずオイルフィルターの目詰りは当然早くなり、目詰りが進むにつれて、フィルター回路の一次側と二次側の差圧が高くなり、エンジンオイルの循環に悪影響が出てくる。すなわち、一次側の圧力は上昇するが二次側の給油圧力は逆に低下傾向となる為に、特にエンジンヘッド(頭部)回りのオイル供給に悪影響が出てくる。
     この状態が続くと、吸入,排気のバルブ系統を駆動しているカムシャフトやカム,ロッカーアームシャフト,バルブタペット接触部,ピストン上部リング等の潤滑が悪くなってくる。
     この結果、タイミング調整のズレ,不完全燃焼の進行,排気ガスの増加,ピストン部からのガス洩れによる内部背圧の上昇とエンジンオイルの汚れ促進等が関連してくる。
    また、エレメントの差圧が一定の圧力以上になると、リリーフバルブ(安全弁)が作動して一次側から二次側へエレメントを通らずに直接オイルが流れ込む様になるが、もしその状態になれば、今度は濾過されないオイルがそのままエンジン全体に流れる事になり、一層潤滑面では望ましくない状態になる。
     どのような内燃式エンジンも殆どこの様な図式となっているため、エンジンオイルにとって最も重要な添加剤成分は、清浄分散剤と言われるゆえんであります。

  3. 添加剤投与後の状況

     その後、平成2年11月上旬に、オイル添加剤「SUPER OIL 21」を新油に10%添加混合したオイルでオイル交換を実施した。分析用試験油の採取は、従来と同様に約500時間のオイル交換毎に実施してこれを分析調査した。
    オイル添加剤投与後は同等のオイル交換周期で3回にわたり分析調査を行ったが、この結果顕著な改善効果が立証された。(データNo.2のグラフ参照)

    1. 油中固形分の大巾減少と粘度上昇の抑制効果

       特に大巾に改善されている分析項目の中で、上記2点が大巾に改善された理由は「SUPER OIL 21」の中に配合されている、独自の清浄分散剤(無灰型分散剤)と酸化防止剤の効果によるものである。
       従来のエンジンオイル設計(調合)理論は特に重油燃料に対してはアルカリ価の強いカルシウム系清浄剤を主体として調合している傾向が殆んど(B重油、C重油等を燃料とする場合は、アルカリ価を高めて硫酸灰分に対する酸中和能力を高める事も必要)であった。しかし、この為に油中灰分の増加を招く事もしばしば見られ、使用限度を越えると、急激に固形分が増加する傾向も見られる。これらを改善する為にはアルカリ価を高めるだけではなく、無灰系分散剤を適宜調合したり、エンジンオイル自体の酸化安定性も向上させて、バランスをとる必要が生じてくる。

    2. 油中金属成分(鉄及び銅)の大幅な減少

       この効果もデータNo.2のグラフを参照して頂くと、添加剤投与前に較べ投与後は、鉄成分がピーク値に対しては約1/3,平均値比較で約1/2以下に減少している。(ピストンリングやエンジンヘッド回りの摩耗成分と思われる)銅のメタル成分も投与前に較べ投与後は半分近くに減少している。しかも両方共、摩耗の上昇傾向にあったものが減少又は横ばい傾向となっている状況である。摩耗が1/2〜1/3に減少するということは、エンジン内部の消耗部品の寿命が2倍〜3倍に伸びる事になる訳で、定期修理(オーバーホール)迄の周期が大巾に延長され、大きなコストダウンになる訳である。